コーピングとは?
現代社会は、ストレスを抱えている人が多く「ストレス社会」ともいわれます。プライベートだけでなくをはじめ、会社でも仕事や人間関係でお悩みを抱えている方もいらっしゃいます。
そんな中、心と身体の健康な状態を維持するために効果的な方法の一つに「コーピング」というものがあります。コーピングとは何か、その目的、注目される背景をご紹介します。
コーピングの意味
コーピングは英語でcopingと書きます。は、もともと「対処する」という意味のcopeに由来するメンタルヘルス用語です。
誰もが経験するストレス反応に対する対処法という意味です。ストレスの要因となるストレッサーに上手に対処しようとする「ストレスコーピング」と意味は同じです。
ストレッサーによってかかるストレスを「手で抱える荷物」とイメージしてみると分かりやすいかもしれません。一つひとつは小さな荷物(ストレス)であっても、それがだんだん増えてくれば、自分で持ち切れる重さを超えてしまうと、それは過剰な重さ=過剰なストレスとなって、心身へのさまざまな悪影響を及ぼします。心身の健康を保つためには、抱える荷物が自分の許容限度を超えないようにコントールする必要があります必要なものとしてコーピングがあります。
このコーピングという考えは、米国の心理学者ラザルス教授によって1950年代に提唱されました。ラザルス教授は1963年に1年間日本の早稲田大学に客員教授として勤務した経験もあります。たこの考えは、日本でも従業員の有効なストレス対策の一つとして広まっています。企業だけでなく医療の分野でもストレスを抱えている患者へのアプローチとして、コーピングの考え方が広まっています。
ストレスに対しては、個人が自分なりに対処するだけではなく、企業も、従業員の環境をより良くするためにストレスコーピングの環境や仕組み作りが必要とされています。日本だけでなく、世界でもストレスにより影響を受けています。スウェーデンでも人口の約4分の3がなんらかのストレスによる疾病を経験しているという報告もあります。
コーピングの効果
コーピングはストレスの軽減、ストレス要因の排除を目的として実施します。
適度な緊張感であれば、自分自身のパフォーマンスが良くなったり、意識が高まったりなど良い影響があるかもしれません。しかし、その緊張感が許容範囲を超えしまえば、それはストレスとなり、モチベーションが低下してしまったり、適応障害などの疾病につながってしまう恐れがあります。そうならないたpインめにコーピグを活用してストレスを管理することで仕事への意欲が保たれ、生産性を維持することができます。
また、ストレスが原因の疾患というと、うつ病など精神疾患のイメージがありますが、脳梗塞や心筋梗塞など身体に重大な影響を及ぼすことも。ストレス解消の方法を知ることで、心身の健康を維持しやすくなるというメリットがあります。
コーピングが注目される背景
先述したように、現代社会では、働く人の多くが、さまざまなストレスを抱えています。仕事上の責任の重さや仕事内容、上司や同僚との人間関係など、多岐にわたるストレス要因があります。
厚生労働省が2023年に公表した「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある」という労働者の割合は 50%を超えているという結果でした。
「強いストレスとなっていると感じる事柄」として最も多かったのは「仕事の量」、次に「仕事の質」、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」です。
なんと日本で働く方たちの半数以上の割合の人が、仕事に対して強いストレスを感じているという現状です。ストレスフルな環境では、従業員が仕事で高いパフォーマンスを発揮することは困難です。当社でも、支援先の企業に勤務する方のなかに、ストレスが原因で休みがちになったり、休職されるかたもいらっしゃいます。ですので、ストレスに対処できる方法としてコーピングが注目されています。
そもそもストレスって
コーピングを学ぶ前に、まず「ストレス」について学んでおきましょう。理解を深めておきましょう。
ストレスとは、外部からの刺激により、心身に感じる負担のことです。外部からの刺激(ストレスの要因)を「ストレッサー」、これによって心身に表れる反応を「ストレス反応」といいます。また、ストレスについては全く同じストレスを受けても、ストレス反応が現れる人とそうでない人がいます。ストレスを受けてから反応が出るまでの間の過程に人によってそのストレスに対する脆弱性が異なり、そのような反応の違いが起こると前述のラザルス理論で説明されています。また、
ストレッサーについて
ストレスの要因となるストレッサーは大きく4つ「心理的ストレッサ」「社会的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「物理的ストレッサー」に分類されます。
①心理的ストレッサー:緊張、抑うつ、不安、焦りといったネガティブな感情を伴う問題
②社会的ストレッサー:職場環境、経済、政治など社会的要因
③化学的ストレッサー:ニコチン(タバコ)、アルコール(酒類)、薬物、有害物質等化学物質による刺激
④物理的ストレッサー:音、振動、光、温度等による環境刺激
ストレス反応
ストレッサーによって生じる主なストレス反応には、以下の3種類です。
- 心理面:不安、無気力、怒り、集中力の低下 等
- 身体面:不眠、頭痛、過食・拒食、動悸 等
- 行動面:遅刻、欠勤、暴言・暴力、ミス等
ラザルス理論には「人間は何らかの刺激を受けたとき、その出来事を二回に分けて評価し、評価の結果としてストレス反応が表れる」という説が提唱されています。という理論を提唱しました。ラザルス理論によると一回目の評価では、その出来事が自分にとって有害か否か評価します。「無関係、無害か肯定的」と評価されたストレッサーは、ストレスとはみなさず、二回目の評価にはいきません。有害であると判断したストレッサーには、二回目の評価がなされ評価によって適応するための行動が検討イコール「コーピング」が実施されます。ラザルス理論によると、こういった二回の評価は、無意識化で行われているため、こういったコーピングに関する知識や理論をしらないまま、「なんとなく不安」「激しい怒り」という心理ストレスが顕在化してしまい、生じたストレスによってダメージを受けてしまうことになってしまいます。
当社クライアントへのアンケートでもコーピングという技術があるということをあまり知らないか、まったく知らないという方が実に半数を超えておりました。
深刻な医療・カウンセリングリソースの不足
世界もそうですが、日本でもこういったメンタル不調の問題から疾病となり、医療機関やカウンセラーの助けが必要な方が多くいらっしゃいます。しかし、現在はそのニーズに十分な体制がとられているとは言えない状態です。精神科の医院では患者を診断して、病名を判断し、必要に応じて薬を処方します。これは症状を緩和・軽減するもので、これだけでは完全に治癒(完解)したとはいえません。ストレスの原因を患者との対話の中から引き出し、その原因にまでアプローチし、解決していく能力を持ったカウンセラのリソースがひっ迫しています。著名なカウンセラになると、最低でも数か月、長い場合半年予約が取れないといった状況です。
メンタルヘルス維持が求められる企業側
こういったメンタル不調に陥ってしまうと、現状の医療体制では疾病になってから回復するまでは、長い時間がかかります。従業員が休業してしまうと、その間の戦力のカバー、休業者への保証が必要となり、メンタルヘルスの問題は企業にとっても大きな問題です。ですので、こうなってしまう前に、メンタルヘルスを良好な状態で維持し、ストレスがかかっても自分でストレス反応をコントロールする方法を教育することが企業に求められています。この記事でご紹介しているコーピングは、もうひとつの有効な手法として知られている認知行動療法と比較してわかりやすく、実践しやすいのが特徴です。小学生等低年齢層向けの書籍もあるくらいですので、比較的短期間・低コストでコーピング手法を社内導入することができます。
コーピングの3つのパターン種類と例
ストレスコーピングは、3つのパターン①情動焦点型②ストレス解消型③問題焦点型があります。
ストレス解消型
ストレス解消型は、ストレスを感じたなと思った後、そのストレスを発散させたり、身体に追い出し追したりする法王です。これは実はストレスを受けていると感じたときに無意識に行っていることもあります。コーピングで言うと「リラクゼーション型コーピング」や「気晴らし型コーピング」があります。
リラクゼーション型コーピングは、ヨガやピラティスなどで感じるリラクゼーションによってストレスを緩和する方法です。例として、
- 格闘技系エクササイズ
- ヨガ・ピラティス
- アロマセラピー
- マッサージ・サウナ
等があげられます。
気晴らし型コーピングは、キックボクササイズをしたり、旅行に行くなど気晴らしをすることでコーピングとする方法です。例として
- 格闘技系エクササイズ
- 友人と食事行っておしゃべりをする
- 旅行へいき日常から離れて気分をリフレッシュする
リラクゼーション型コーピングは、ヨガやアロマテラピーなどのリラクゼーションでストレスを緩和する方法です。以下のようなものが例として挙げられます。
情動焦点型
情動焦点型は、ストレッサーそのものへのアプローチでなく、ストレスを感じているという感情にアプローチしてコントロールを行う方法で、認知的再評価型コーピング、情動焦点型コーピングの二つがあります。
情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングは、ストレッサーによって発生したストレス反応を観察し、それを自分以外の信頼できる人に話したすことでストレス反応を軽減する方法です。家族や友達、専門家である医師やカウンセラに話を聞いてもらうのが具体例です。専門家の方が知識経験があるので最適なアプローチをしめしてくれるのでおすすめですが、予約をとれないなどの問題で難しい場合は、家族友人を頼るのも手です。できれば、コーピングの入門書を読んでもらいながら相談してもらうのがよいでしょう。
認知的再評価型コーピング
認知的再評価型コーピングは、ストレッサーに対する自分の捉え方に歪み(バイアス)がないかを確認し、あったばあいそれを修正して、ストレスに対する自分自身のとらえ方を修正していく方法です。例えば、
- 任されたプロジェクトの責任がとても大きく、「絶対に失敗できない」とか「自分の能力を超える過剰なスキルが求められえている」という自分のとらえ方を修正し、「上司から期待されているからこのプロジェクトを任されているのた」と上司と相談しながら考え方を修正する。
- 難しい案件を担当し、「自分には不可能だ」という自分の考え方をと「やりがいがある面白いチャレンジができるなあ」と考え方を修正する。
といったものがあります。
問題焦点型
問題焦点型コーピング
これは、ストレッサーそのものにアプローチし、排除する方法です。問題焦点型のなかでも「問題焦点型コーピング」と「社会的支援探索型コーピング」があります。
これは問題の根本を解決して、ストレスが全く存在しない状態に移行することが特徴です。例としては、
- 職場の上役との考え方の違いを埋めきれないので、会社に移動願を出して別の職場に移動する。
- 採算の厳しい職場にいて、つねに皆が疲弊しているので、部門の構造改革を行って、採算を改善してもらう。
社会的支援探索型コーピング
これは、ストレッサーにに接したときに、周りの人に相談し、アドバイスや具体的な支援を求める、問題の解決を目指すこアプローチです。例としては、
- 能力を超える仕事が続いているとき、上司や同僚、同期に相談し、何が問題で、その問題を解決する方法がないかアドバイスを求める
- 職場で直面している人間関係のストレスについて、信頼できる同僚、人事部門に相談して、問題解決への支援を仰ぐ。
注意点
ここで注意していただきたいのですが、周囲の人間に相談すると、相談された人によっては、自分の経験に基いた解決策を提示してくれて、実際には解決にはつながらないこともありますので、相談する人を良く見極めましょう。基本的にはストレスコーピングの専門家に相談することをおすすめします。そのうえで、現実可能性の高い解決策をめざしましょう。
講座・研修を開催
ストレスコーピングという概念や具体的な実践について、当社では講座・研修を実施てしています。お気軽にご相談ください。実施するのも一つの手でしょう。
例:
・新入社員向けセルフケア研修
・管理職向けコーピング研修
ご注意事項:弊社はメンタルヘルスに関する情報、研修を提供しておりますが、カウンセリングは行っておりません。専門家の方にご相談ください。